Project 赫夜

主に詩と日記を掲載しています。 卒制でゲーム作ってます。載せられる。。。かなぁーー;

先行掲載分(29th/MAY)

Lost Crusade 〜Another Episode〜

#. 00 Prologue


 根雪も消えつつある早春の朝、低い太陽を手のひらで隠した。吐き出した白い息を見て、思わず身震いする。悴(かじか)んだ手で、ポケットから取り出した黒い手袋をはめようとするが、うまくはめられない。仕方なく、歯を使ってはめた。


   カンカンカンカン……


 遠くで踏切の音がする。ぼーっと空を眺めていた俺は、つられるように踏切を見た。日に4度しか閉じることのない寂(さび)れた踏切が、静かに動き出している。閉じる意味のない踏切だと常々思っていたのだが、今日は事情が違うらしかった。

 そこには、じっと地面を見ながら立ちつくす、黄色い帽子を被った子どもがいた。踏切が閉じきれば、逃げるだろうが、ここは田舎だ。どうせ顔見知りの誰かの子どもなのだろう。子どもを視野に入れながらまた、ぼーっと歩く。

 踏切が閉ざされる。だが、子どもは動かない。ただじっ……、と地面を見つめている。……ここにきて、耳が聴こえないのかもしれない、なんてぞっとする考えが過ぎる。面倒だが助けないわけにはいかなかった。

 この線路は、まっすぐ伸びたローカル線だった。向こうからも遮蔽物がない分、よく見えているはずだが、油断は生じるものだ。それに厄介なことだが、この踏切の遮断機はゆっくりだった。時間が無い。

「キミ! 早く線路から出るんだ!」

 叫びながら駆け寄る。が、距離がありすぎる。走りながら、猛烈な速度で進入してくる電車の姿が確認できた。

 けたたましく鳴り響くブレーキ音。電車と踏切の距離を測る。……間に合わない!

 そして、数m手前で、ゴリッという音とともに、子どもの姿が消えた。

 電車は踏切を20mほど超過して停止し、俺の目の前に、内側に何かがこべり付いた帽子が落ちた。


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